PROJECT REPORTプロジェクトレポート

REPORT 0020

橋梁の実振動を利活用した状態変化の把握・モニタリング技術

2026.09.18

本技術実証は、課題番号9999「自由テーマによる先進技術の提案窓」に対して、橋梁の状態変化の把握・モニタリング技術を検証したものです。

 

 中日本建設コンサルタント株式会社、株式会社中電シーティーアイでは、振動データを用いた橋梁の状態監視を実現してきたが、この振動データ分析技術を応用して、橋梁床版の損傷部位判定、経時的劣化判定や補修効果判定を目指してきました。本手法は、床版裏側にセンサを設置するため、交通遮断することなく計測が実施できること、振動データは構造体内部を伝搬することから内部損傷確認把握のメリットを有しています。

 本検証実験では、小型無線加速度センサによるデータ収集と独自分析技術による、実フィールドにおける床版損傷位置判定・経年劣化監視・補修効果の定量評価技術の検証を実施しました。

 

 

 

 

 

インフラ運営・維持管理上の課題

 橋梁の長寿命化を図るためには、損傷が深刻化する前に、適切な時期で対策を実施することが重要です。そのためには、橋梁の状態を定量的に把握し、劣化の進行を継続的に確認できることが望まれます。特に、床版では疲労損傷などによる剛性低下が課題となるため、目視だけでなく、劣化の進み具合を客観的に捉える技術が求められています。

 これまでにも、床版部材の振動特性に着目し、輪荷重走行試験や衝撃振動試験などの非破壊試験によって状態を評価する手法が検討されてきました。しかし、これらの方法は交通規制が必要になる場合があるほか、計測や調査にかかるコストが大きいという課題があります。このため、交通への影響を抑えながら、より簡易かつ継続的に床版の状態を把握できるモニタリング技術の確立が求められています。

 

 

 

本プロジェクトの目的

 これまで、振動データを用いた橋梁の状態監視技術により、橋梁全体の状態変化を把握する取組みが進められてきました。本プロジェクトでは、この振動データ分析技術を橋梁床版の健全性評価へ応用し、床版の損傷位置判定、経時的な劣化判定、ならびに補修効果の定量評価を可能とする技術の検証を目的としています。

 本手法は、床版裏面にセンサを設置して計測するため、本線交通を遮断することなくデータ取得が可能となります。本検証では、小型無線加速度センサによるデータ収集と独自の分析手法を用い、実床版における損傷位置の特定及び健全性評価の妥当性、経年劣化・補修効果の定量評価技術の有効性を確認しました。

 

 

実証フィールド

 愛知県美浜町内の南知多道路古布橋(下り)において計測を実施しました。計測した古布橋(下り)の諸元は以下のとおりです。

 

 

 

 

 

先進技術の概要

1)コンクリート床版は劣化が進むと剛性(弾性係数)が低下する傾向にあります。

2)剛性が低下すると車両の走行等で発生する振動に変化があり、振動数が低くなります。

3)床版に複数センサを取り付けて測定することで、剛性の低下状況をコンター図にマッピングすることができます。

 このように、硬い健全な床版は高振動で揺れますが、劣化等で構造体に損傷が加わると低振動側に移行(図6)していきます。この特性を利用して損傷位置判定や補修効果(補修剛性復活より高振動化)を判定します。この特徴を的確に捉えるために独自の高精度な分析方法を確立しました。この分析手法は、図7に示すように他の振動成分などのノイズを含んだ振動波形から、床版固有の定常振動を振幅の大小に関わらず、発生頻度をもって確認することで、床版の振動特性を正確に得ることが可能となります。

 

 

先進技術の現場検証結果

①床版損傷位置判定

 床版内の損傷位置や損傷程度を推定するために卓越振動数分布を求めます。図8は、橋梁定期点検で作成した損傷図と、現地調査結果から得た卓越振動数のコンター図を並べて示した結果です。構造物の剛性が低くなると卓越振動数も低下するため、このように床版内の損傷傾向状況の把握が可能となります。

 

 

 

②経年劣化監視

 状態監視適用の一例として1年間経過した結果の比較を行います。計測開始時の卓越振動数と1年経過時の卓越振動数(図9)で比を求めることで劣化進行の速い部位(図10)が求まります。卓越振動数比が小さな値ほど剛性低下進行が進むことになり、図10から左上部分が他より劣化が進行しているのが確認できます。

 

 

③補修効果の定量評価

 補修実施前後での計測による卓越振動数の比率を求めることで、剛性向上率が式1で算定可能となります。図11は、補修実施状況と補修前後の卓越振動数比で求めたカラーコンターとを重ねて示してあります。青色系の個所が補修効果の高い範囲となり、多くを補修した領域に概ね一致しています。

 なお、ここでの補修対象は床版上面(調整コンクリート)の補修ではありますが、この効果によっても卓越振動数が変化することを表しています。

 

 ①床版損傷位置判定、②経年劣化監視、③補修効果の定量評価の項目において良好な結果が得られましたが、特に①においては実際の現地調査と相関のある卓越振動数の結果が得られている点、③において施工した修復位置・ボリュームに応じた卓越振動数比の分布が得られているため、振動データ計測による床版状況評価の可能性を示すことができました。

 これまでに示したように、振動データ計測結果と過去の定期点検・補修工事の履歴とを照合することで、劣化しやすい部位、補修の有効性も推測できるようになりました。

 

 

本技術の適用性

【本技術の適用性 愛知道路コンセッション株式会社 評価】

 

①経過観察の精度向上 

:

床版の劣化進行を示唆する結果が得られており、今後多くの実証を行うことでデータに基づいた意思決定(修繕の箇所・時期の決定など)の根拠となりうると考えます。

 

②劣化の進行状況の可視化

:

定量的で、かつ劣化進行箇所の特定が正確にできることで、目視での損傷見落としのような人為的ミスが削減できる技術となりうると考えます。

 

③交通影響の低減(+コストダウン)

:

本線上での交通規制が不要なこと、本線下(交差道路)での規制時間も短時間であり交通影響を最小限にできる技術であると確認できました。また規制によるコストが低減でき、大掛かりな測定機器が不要なことから比較的安価に導入できる技術になりうると考えます。

 

  総じて、低コストで効率的に精度の高いデータが得られる可能性がある技術と評価します。

 

 

今後の取組み予定

 今後は、本研究成果を適用する事例を増やすことで、更なる妥当性の確認と精度向上を目指します。また、これらの成果を反映した「床版評価システム」の開発を行い、これまでの目視点検等をサポートするシステムとなることも目指していきます。

  

 

振動特性に基づく異常検知の検証 

:

振動データ解析に関する知見を蓄積し、異常検知に適した閾値の設定を進めます。さらに、その成果を自動アラート機能として実装することで、損傷の深刻化を未然に防ぎ、予防保全型メンテナンスへの円滑な移行を支援します。

 

解析対象の拡充と汎用性の検証 

:

PC桁橋、斜張橋、ラーメン橋など、構造形式の異なる橋梁へ解析対象を拡大します。多様な橋梁形式におけるデータを蓄積・活用することで、判定精度の安定性を高めるとともに、システム全体の汎用性を検証します。

 

環境ノイズに対する堅牢性の向上

:

補修用足場の設置など、外部環境要因によって生じる振動特性の変化を解析します。これらの影響を考慮したノイズ除去技術の適用や予測モデルの高度化により、誤検知を抑制し、実環境下においても安定して運用可能なプロセスの確立を目指します。

 

 

先進技術保有企業

 中日本建設コンサルタント株式会社 建設技術本部

 会社HP:http://www.nakanihon.co.jp

 

既発表論文等

 令和7年度土木学会全国大会 第80回年次学術講演会 2025年9月

 『橋梁の実振動を利活用した床版のモニタリング技術の研究』

 筆頭著者:新居見 英樹(中日本建設コンサルタント株式会社)

 令和8年度土木学会全国大会 第81回年次学術講演会 2026年9月

 『橋梁の実振動を利活用した床版のモニタリング技術の研究(その1 経年劣化確認)』

 筆頭著者:永坂 英明(中日本建設コンサルタント株式会社)

 『橋梁の実振動を利活用した床版のモニタリング技術の研究(その2 補修効果確認)』

 筆頭著者:新居見 英樹(中日本建設コンサルタント株式会社)

 

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