REPORT 0013
三次元レーザレーダを用いた逆走車・誤侵入歩行者防止システム
2021.10.15
本実証は「【課題番号 0003】逆走車両・歩行者の侵入防止」に対して行ったものです。
インフラ運営・維持管理上の課題
近年、⾼速道路において、逆⾛⾞両による交通事故が全国各地で度々発⽣し、ニュースや新聞に取り上げられています。愛知県有料道路においても逆⾛⾞両は発⽣しており、さらには歩⾏者が、通⾏を認められていない有料道路に侵⼊してしまうケースも少なからず発⽣しています。⾞両の逆⾛や歩⾏者の侵⼊を抑制するため、電光掲⽰板や⽴て看板による注意喚起を実施しています。しかしながら、運転⼿や歩⾏者の中には有料道路へ侵⼊している認識がない場合が多く、看板を⾒落としている場合があります。また、侵⼊される⽅は外国籍である場合も多くあり、看板が⽬に⼊ったとしても侵⼊してはいけないことを認識していない可能性もあります。以上のことから、注意看板設置よりも確実な⽅法で侵⼊を防⽌する対策が求められています。
「三次元レーザレーダ」の応用で課題を解決
本技術実証は、(株)IHIが開発した「三次元レーザレーダ」(3DLR)の技術を応用しています。
本技術は、(株)IHIの三次元レーザレーダを用いて、道路上で発生した逆走検知、侵入禁止領域にいる歩行者を自動で検知し、警告を発することで、対象者が安全に退避するための支援を行うことができます。
【三次元レーザレーダの特徴】
三次元レーザレーダはスキャンしながらレーザ光を照射することで連続的に距離を計測し、物体の高さやサイズ、移動速度などを検出することが可能です。この検出した物体データを解析することにより、車両や歩行者、進行方向などを識別し、逆走や禁止領域への侵入などを検知することが可能になります。また、カメラなどの他センサと比較して夜間や雨天時などの悪天候でも物体を検知できるという特長があります。
図1 三次元レーザレーダの動作原理
逆走車両・誤進入歩行者を検知できることを実証
実証実験として、中部国際空港連絡道路のセントレア東交差点付近で計測を行いました。
図2は三次元レーザレーダと評価用のカメラを実験現場へ設置した状況を示しています。
図2 実験状況(左:センサ設置状況、右:試験現場写真)
三次元レーザレーダは、図3に示すように車両や歩行者を識別して検知することが可能です。今回、前述の実験環境にてセンサで計測結果、カメラデータを収集し、データ解析することで逆走や侵入歩行者を検知するアルゴリズムを構築しました。このアルゴリズムにより図4のような逆走車両や侵入歩行者を正確に検知することができることを確認しました。また、同時にアルゴリズムが通常走行している車両を逆走と誤認識しないかの評価も行い、特殊な状況を除いて誤認識が発生しないようなアルゴリズムを構築しました。
図3 カメラ画像と三次元レーザレーダの識別例
(左右とも同時刻同地点)
図4 検知結果(左:逆走検知結果、右:誤進入歩行者検知結果)
本実証によって、正確に逆走車両や誤進入歩行者を検出することが可能であることが確認できました。
逆走車両・誤侵入歩行者警告システムの構築・評価
前述の三次元レーザレーダによる検知技術を利用して、図5に示すようなシステムを構築しました。逆走車両に対しては逆走車線に逆走を知らせるLED表示板を設置し、誤侵入歩行者に対しては音声付きパトランプを設置し光と4か国語で警告します。また離れた管制室にも逆走等を警告するシステムを組んで、実際の運用評価を行いました。
実際の運用評価では、図6に示すような逆走車両や誤侵入歩行者が実際に発生し、システムがこれらを正常に検出し、通知・警告が機能したことを確認しました。
図5 逆走車両・誤侵入歩行者検知、警告システム概略図
図6 逆走車両(左)・誤侵入歩行者(右)検知例
期待される効果と導入
今回の実証実験により本システムの逆走検知、警告機能が実証されました。本システムを導入することで、逆走・誤侵入発生時は道路利用者へ即時警告できるだけでなく、誤侵入発生の抑制ならびに管制センターへの早期発報による即時対応が可能です。これにより安全な道路使用のための道路管理をサポートし、より効率的で正確な運用が可能になることが期待できます。
この結果から、本システムを実証実験箇所にて、そのまま実務に導入することとなりました。これは三次元レーザレーダを用いた有料道路出入口での逆走者や誤侵入歩行者の防止システムとして、全国初の採用です。
先進技術保有者
株式会社 IHI
会社HP:
三次元レーザレーダ紹介HP:
https://www.ihi.co.jp/3DLaserRadar/
お問合せ窓口
マエダアクセラレートフィールズ事務局
TEL:0297-85-6606
Mail:jimukyoku-aaf@jcity.maeda.co.jp