PROJECT REPORTプロジェクトレポート

REPORT 0010

準ミリ波レーダによるトラフィックカウンタ

2020.08.18

 本技術検証は、課題番号9999「自由テーマによる先進技術の提案窓口」に対して、準ミリ波レーダによるトラフィックカウンタの性能を検証したものです。なお本検証はプロジェクトNo.0009「準ミリ波レーダによる逆走車検知システム」と並行して取り組んだものです。

 

インフラ運営・維持管理上の課題

 高速道路等における交通情報(台数、車種、車速など)の取得は、事故や渋滞の発生を把握するだけでなく、CO2排出量や渋滞損失時間など各指標の推計や施策の効果計測などで活用されてきました。
 交通情報を取得するために、トラフィックカウンタの技術はこれまでにも適用されておりましたが、設置・点検の際の交通規制による交通状況への影響や、悪天候時・夜間の精度の低さ等の課題がありました。また、料金所における車種区分については、一部を料金収受員の目視に頼っていることから、正確な車種の判別には至っておりません。
 高速道路等のさまざまな交通情報を正確に取得するためには、既設トラフィックカウンタと同等程度の精度を備え、付加価値の高いトラフィックカウンタシステムであることが求められています。

 

準ミリ波レーダによるトラフィックカウンタシステムの概要 

 古河電気工業㈱では、周波数24GHz帯の準ミリ波レーダを用いたトラフィックカウンタシステムを開発しています。システムの概要を図1に示します。準ミリ波帯のパルス電波を照射し、車からの反射波により車両を検知し車種を判別します。
 準ミリ波レーダには以下の特徴があります。

  1. 車両の位置、速度、進行方向を検知し、車両のサイズを推定できる。
  2. 降雨、降雪、濃霧の影響を受けにくく、夜間や逆光に対しても検知性能の低下がない。
  3. 1台のレーダで複数車線の走行車を検知できる。
  4. 照明灯等の支柱に設置するので、工事や保守が容易になり、既設のトラフィックカウンタに比べ低コストで導入できる。

 本システムは走行車数を自動計数するとともに、平均速度、車種を判別して集計サーバにデータを送信します。

図1 システム概要

 

現場検証の結果

検証フィールド

 南知多道路 豊丘料金所

 準ミリ波レーダ機器の設置位置と全景を図2に示します。上り線の豊丘料金所入口手前の照明柱に準ミリ波レーダ機器を取付け、検証を行いました。判定エリアを図3に示します。

図2 準ミリ波レーダ機器の設置位置と全景

 

図3 走行車判定エリア設定

先進技術の現場検証結果

 南知多道路上り車線の豊丘料金所入口付近にレーダを設置し、レーダ式及びループコイル式(既設)トラフィックカウンタの計測と、正値である料金所通過車両数との比較結果を表1に示します。既設トラフィックカウンタでは5.5m以上を大型車、5.5m未満を小型車と判定しており、検知精度*を比較するためにレーダ式トラフィックカウンタにおいても同じ基準で車両サイズを判定します。(*既設トラフィックカウンタと準ミリ波レーダの正値に対する誤差率を100%から差し引いたもの。以下、「検知精度」と言う。)

 

1)走行車カウント検証

 上り車線走行車を目視によりカウントし、レーダでの検知判定結果と照合しました。この検証では長さ5.5m以上を大型車としていますが、目視にて明確に判断することは困難なため、参考値と考えて下さい。
 約1,000台分の走行車にて検証しましたが、既設トラフィックカウンタの検知精度*が99.3%に対し、レーダでは99.8%と良好な結果が得られました。レーダによる車種判定では、大型車が目視より少ないですが、既設トラフィックカウンタより多く、目視での精度は不明なため正しい評価は困難ですが実用上問題ない精度と考えられます。

 

2)降雨時のカウント検証

 2019年10月25日千葉県に記録的な大雨をもたらした低気圧は、検証エリアに最も近い気象庁観測点のある南知多でもデータ取得時に21mm/時の降水量を記録しています。降雨時のレーダおよび既設トラフィックカウンタの検知精度*を料金所設置の監視カメラ映像データにて比較・検証しました。
 約1時間で178台の走行車がありましたが、既設トラフィックカウンタの検知精度*が99.4%に対し、レーダでは100%検知しています。

 

3)夜間のカウント検証

 夜間において、レーダおよび既設トラフィックカウンタの検知精度*を料金所設置の監視カメラ映像データにて比較・検証しました。レーダおよび既設トラフィックカウンタどちらの検知精度*も100%を示し良好な結果が得られました。

 

表1 カウント検証結果

4)長期間カウント検証

 2019年11月18日から21日間において、レーダによる検知数および既設のトラフィックカウンタの検知数を料金所で集計している交通量データ(正値)と比較し、照合した結果を表2に示します。レーダは安定して高い精度であり、平均して99.4%の検知精度*を得ました。

 

表2 長期間カウント検証結果

 なお料金所データでの車種区分は長さ5.5mで単純に区別できないため、この検証では検知精度*のみとなります。

 

まとめ

 今回の検証により、本技術は天候、夜間等に依存せずに約99%の高い検知精度*を得られることが実証されました。照明柱に一台設置することにより、ループコイル式と比べ大規模な工事を必要とせず複数車線の同時計測が可能であることも実証されました。
 トラフィックカウンタとしての性能はもちろんのこと、逆走検知システムの側面も併せ持っています。
 https://www.acceleratefield.com/projectreport/2020/04/03/5115.html
 したがって、本トラフィックカウンタは従来のものに比べ、効率的に交通情報を提供でき、また今回の道路脇の照明柱に設置したように工事や保守が容易になったことによって安全管理、維持管理上でも役立つ付加価値の高い技術だと考えます。今回の検証では車両サイズによる判定はできたものの、車種による区分までは至っておりません。料金収受員が目視による車種区分を行っている現状に対して、車両サイズが車種判定の助けになる可能性は大いにあります。

 

今後の取組み予定

 今後はデータ送信方法、高精度化等を検討し、トラフィックカウンタの製品化に取り組む予定です。

 

先進技術保有企業

古河電気工業株式会社 ブロードバンドソリューション事業部門

https://www.furukawa.co.jp/

 

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