REPORT 0009
準ミリ波レーダによる逆走車検知システム
2020.04.03
本実証は「【課題番号 0003】逆走車両・歩行者の侵入防止」に対して行ったものです。
インフラ運営・維持管理上の課題
逆走車両による交通事故が全国で発生しており、社会問題としてニュースや新聞に取り上げられています。愛知道路コンセッション㈱(以下、ARCと略す)が運営する有料道路においても逆走車両は発生しており、逆走防止対策として標識やポールなどを設置し、運転者に対して視覚的に注意喚起を行ってきました。
一方で、逆走車両は、道路管制センターでモニタリングしているITVカメラの映像、逆走車発見者からの通報によって逆走を認知し初動対応が行われることから、逆走発生から対応までに時間を要する場合があります。安心・安全な道路を提供するために逆走車両の発生防止や早期発見する手段が必要です。
準ミリ波レーダによる逆走車検知システムの概要
古河電気工業㈱では、周波数24GHz帯の準ミリ波レーダを用いた逆走車検知システムを開発しています。逆走検知システム概要を図1に示します。準ミリ波帯のパルス電波を照射し、車から跳ね返った反射波により車両を検知します。
準ミリ波レーダには以下の特徴があります。
➀車両の位置、速度、進行方向を検知できる。
➁降雨、降雪、濃霧の影響を受けにくく、夜間や逆光に対しても検知性能の低下がない。
③1台のレーダで複数車線の走行車を検知できる。
④路側帯の照明灯等の支柱に設置可能であるので、工事や保守が容易にできる。
本システムは逆走車を検知すると、表示板で逆走車へ警告、監視サーバで道路運営者・管制センターへ発報および職員へメール通知します。すなわち本システムは逆走車の防止および道路運営者のリアルタイムでの認知が可能になる技術です。
図1 逆走検知システム概要
現場検証の結果
検証フィールド
南知多道路 豊丘料金所
準ミリ波レーダ機器の設置位置と全景を図2に示します。上り線の豊丘料金所入口手前の照明柱に準ミリ波レーダ機器を取付け、検証を行いました。
図2 準ミリ波レーダ機器の設置位置と全景
実証期間
2019年9月27日~2020年2月25日(約5か月間)
事前検証
本システムの試験運用前に逆走車の「検知性能」および「検知率」について事前検証を行いました。
➀検知性能の検証
順走と逆走が混在する条件下で検知できるのか検証。
➁検知率の検証
目視による車両数のカウントとレーダ検知した車両数との比較による検知率の検証。
上下線を含むように設定した逆走判定エリアを図3に示します。また、逆走判定エリア内に入り赤色の通過ラインに達する上り走行車を「逆走車」、青色の通過ラインに達する下り走行車を「順走車」と判定します。
図3 事前検証時の逆走判定エリア設定
➀検知性能の検証結果
検証した結果の一例として上下線走行車の軌跡を図4に示します。走行軌跡について、順走は青、逆走は赤で判定されています。このような条件下でも逆走を検知できることが実証されました。
図4 上下線走行車軌跡
➁検知率の検証結果
検知率の検証結果を表1に示します。3日間(各日約3時間)の検証期間で目視により上りの車両数をカウントした総数1,770台に対し、誤検知や未検知は無く検知率は100%でした。
表1 検知率の検証結果
試験運用の結果
試験運用時の逆走判定エリア設定を図5に示します。上り側を逆走判定エリアにし、試験運用を実施しました。
図5 試験運用時の逆走判定エリア設定
試験運用期間中、逆走が2件発生し本システムで検知しました。逆走案件の概要を表2に示します。
表2 逆走案件の概要
※プッシュ型電子メールを使用。
本システムで逆走検知した一例として1件目の逆走の軌跡を図6に示します。順走を青、逆走を赤で示しています。豊丘料金所手前でUターンを行い逆走している様子が分かります。
図6 1件目の逆走の軌跡
まとめ
順走車に紛れて逆走車が発生する条件下でも未検知・誤検知はなく逆走を検知できることが実証されました。また、試験運用期間中に2件の逆走を検知することができました。表2の結果より、逆走発生時刻から数秒後にはメール受信をしており、早期に逆走を認知できることが実証されました。
実際に逆走検知した2件の発生時間帯は昼間と夜間でした。夜間に発生した逆走に関しては、料金所職員も同時に認知し道路管制センターへ通報しています。また、昼間に発生した逆走は、本システムの検知によりARC職員を通じて道路管制センターへ通報することができました。
料金所職員は、夜間の場合ヘッドライトの動きなどで車の動きが認知できたが、昼間の事例では逆走発生場所が離れていたことから認知できなかったようです。
以上より本実証では、本システムが逆走の発生を現状よりも正確に発見できることがわかりました。
今後の取組み予定
本システムの社会実装に向けて、以下の課題について引き続き検討を進めていきます。
➀ARCが運営する有料道路路線内において、本システムが逆走を検知できる設置場所の条件に合致する場所を選定し、費用対効果の検証を行う。
➁ARCおよび道路管制センターと具体的な逆走車両への警告方法や本システムの運用方法について調整する。
先進技術保有企業
古河電気工業株式会社 ブロードバンドソリューション事業部門
先進技術保有企業
マエダアクセラレートフィールズ事務局
TEL:0297-85-6606
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