PROJECT REPORTプロジェクトレポート

REPORT 0005

遠方からの写真撮影で支承の健全性評価

2019.09.30

「画像による変位計測技術」の応用で課題を解決

 本技術実証は、課題0001「橋梁の痛み具合を安価に数値化」に対応しており、(株)ズームスケープが開発した「画像による変位計測技術」(以下、「実証技術(ZS)」とする)を応用しています。

 本技術は、カメラで経時的に撮影した写真(静止画像)を自動解析することで、日中の気温の変動による橋桁伸縮量を画像から解析し、支承の健全性を評価するものです。

 

【画像による変位計測技術の特徴】

 ➀携帯可能な機材構成(カメラ・三脚・レーザー距離計・ノートPC)により簡便な変位計測が可能。

 ②ノンターゲット計測が可能なので、高所作業車等によるターゲット設置作業が不要となり、作業時間短縮が可能。

 

図1 画像による変位計測技術の特徴

 

株式会社ズームスケープ コーポレートサイト

  https://www.zoomscape.net/

 

【外気温変化で伸縮する橋桁支承部の桁方向変位評価への適用性】

高架橋下位置のカメラで撮影した写真の自動解析により、外気温の変化に伴う橋桁の伸縮を計測できました。

②ノンターゲットで計測できることを確認できました。

 

ノンターゲットで橋桁の伸縮を評価できることを実証

 技術実証では、図2のように高架橋下に設置したカメラの画像から不動点と計測点(桁端部)を設定し、日中の外気温変化により生じる橋桁の橋軸方向変位をノンターゲットで計測しました。

 

図2 撮影状況

 

 図3は、実証技術(ZS)との比較用に設置した変位計(接触式)の支承①における橋軸方向変位データと外気温データです。橋桁は外気温が高くなるにつれて伸びている傾向が確認できます。

 図4は支承①において橋軸方向の変位を実証技術(ZS)と変位計とで比較したものです。実証技術(ZS)と変位計とで同等の結果が得られたことが分かりました。支承①において、実証技術(ZS)データと変位計データとを比較した結果いずれも測定差は0.1mm程度でした。

 以上より本実証技術(ZS)は、気温の変化に伴う橋桁の伸縮による挙動を支承部の変位計測で捉えられていたことから、支承の健全性評価を行える可能性があります。

 

図3 外気温と橋軸方向変位

図4 橋軸方向変位の比較

 

今後の展望

 本実証技術(ZS)はノンターゲットで非接触の変位計測が可能です。

 今後は計測誤差に結び付く要因を検討し、計測精度を維持できるように計測装置に改良を加えたいと構想しています。

 静止画の代わりに動画像を用いることによって動的な変位計測も可能です。動的変位計測では、大型車通過による支承の挙動を短時間(5分程度)評価することで、支承の健全性評価に活用できることも期待されます。図5に動的挙動の例を示します。

図5 動的挙動の例