REPORT 0004
周囲を見渡すだけで3D化
2019.05.08
「Microsoft HoloLens」を応用した技術の試行
本技術実証は、課題0004「3Dデータ活用によるインフラ維持管理の効率化(CIMによる維持管理の効率化)」を設定して技術を募集するにあたり、一例としてアウトソーシングテクノロジー様の「AR匠(エーアールタクミ)」という技術を試行したものです。本技術は、Microsoft HoloLens(以後、HoloLens)を装着することで、遠隔地にいる作業者同士が視界を共有しながら作業状況の確認や作業中にコミュニケーションを行うことができるシステムですが、その中に簡易に3Dモデルを構築する機能も実装されています。
【AR匠の特徴】
AR匠の技術には以下のような特徴があります。(本課題の解決に関係する特徴のみを説明します。)
① 現場においてスキャニング機能を用いることで、HoloLensが周囲に赤外線を発しながら構造物などの対象物体を認識し、自動的に3Dモデルを作成する。
② スキャンに続き、HoloLensを使って周囲の写真を分割しながら撮影し、それらのデータをクラウド上にアップロードすると、3Dモデルの表面に撮影した写真が自動的に貼り付く。
③ さらに、現場でHoloLensを使って写真、動画、音声などを記録すると、記録した位置と同一位置にあたる3Dモデル内の空間に各種記録が自動的に紐づけられる。
④ PCからWEBを介して対象物の3Dモデルにアクセスすると、表面に写真が貼り付いた3Dモデルと紐づけられた各種情報が表示され、直感的な操作で各種情報を確認することができる。
アウトソーシングテクノロジー株式会社
関連URL
会社HP:https://www.ostechnology.co.jp
AR匠紹介ページ:https://solutions.ostechnology.co.jp/artakumi
簡単な操作でインフラ施設を3Dデータ化できることを確認
AR匠を使って、実際に橋梁端部の3Dデータ化を行ってみました。
1) HoloLensを使って現場を3Dスキャン・写真撮影
2) PCで3Dモデルを確認
3) 完成した3Dモデルvs現場写真
4) 「AR匠」ダッシュボード上で確認できる作業履歴イメージ
この3Dデータは、現場で1時間程度スキャニングや写真撮影を行っただけでした。あとは自動でモデル化されるため、3D-CADなどの専門的な知識を有していなくても現地のモノを3Dデータ化できることがわかりました。また、3Dモデルの構築とは別に、維持管理の記録として現地で写真や動画などの記録を残すと、3Dモデル内にカメラ等のマークが現れ、撮影時刻や撮影方向を示す線が表示されます。これによって、撮影した写真や動画がいつ、どこから、どちらに向かって撮影したものなのかが一目でわかるということが確認できました。
インフラ維持管理分野における活用への期待
これまでは、現地調査や測量等によって現場で取得した情報を書類の形に整えるために、2次元の図面への落とし込みやそれらの情報を紐づけるためのナンバリング等の作業に多くの労力をかけていました。本技術を活用すれば、維持管理上の様々な情報を自動で3Dモデル内に紐づけすることができるため、他の人に伝えるための資料をわざわざ作成する必要が無くなることが期待できます。また、3Dモデルでわかりやすく情報を伝達できることから、職員同士や職員と協力会社等の間の意思疎通時の齟齬が無くなることが期待できます。
一方、インフラ維持管理の現場で本技術を適用するにあたっては、いくつかの課題も見えました。例えば、現地で3Dモデルを作成する場合、HoloLensに付属しているセンサの許容範囲が4m程度であるため、離れた場所にある物体や高さのある構造物などは3Dモデルを作成することができませんでした。また、夏場などにおいて外部環境が35度以上となる場合には、熱によりデバイス自体がダウンする場合があるようであり、注意が必要です。このようなことに配慮し、現時点では、例えば適用対象を屋内設備としたり、現場に持ち込む際は外部環境の厳しい時間帯を避けたりするなど、運用面でカバーすることが必要と思われます。今後は、HoloLens自体の性能が向上し、さらにインフラ維持管理への適用性が高まることに期待したいです。