PROJECT REPORTプロジェクトレポート

REPORT 0001

遠方からのカメラ撮影だけで橋梁の変形量を計測

2018.08.06

※本技術実証は、愛知アクセラレートフィールドへの参加を検討されている方に
活動の具体例をお示しするために、先行して実施したものです。

 

 

「光学振動計測技術」の応用で課題を解決

本技術実証は、課題0001「橋梁の痛み具合を安価に数値化」に対応しており、NEC様の光学振動計測技術を応用しています。本技術は、カメラで撮影した動画を専用アプリケーションで解析することによって、被写体表面の微小な動きを計測するものです。

 

【光学振動計測技術の特徴】

① 被写体表面の模様の動きを画像処理で追跡することにより、マーカー等を設置しなくても、対象物の動きを計測できる。

② 縦横方向だけでなく「写りの大きさ」の変化をもとに、奥行き方向の動きも計測できる。(3次元的な動きを計測可能)

 

光学振動計測技術の概要

光学振動計測技術の概要

 

日本電気株式会社 スマートインフラ事業部

関連URL

https://jpn.nec.com/rd/technologies/infra/index.html

https://jpn.nec.com/press/201412/20141209_01.html

 

この技術を課題0001に当てはめたところ、以下のことから課題を解決できる見込みがあることが分かりました。

 

【支承のスライド機能の定量把握への適用性】

✓橋梁下などのカメラを設置しやすい場所から橋桁の伸縮方向を計測することにより、支承のスライド状況を間接的に把握できる。

✓橋梁の表面(鋼材、コンクリート)は汚れ等何らかの特徴的な模様があることが多いため、マーカー等を設置せずに計測できる。

 

 

0.5mmレベルの計測が可能であることを実証

技術実証では、橋梁下に設置したカメラから桁の下面を撮影し、交通荷重によって生じる桁の3次元的な動きを計測する実験を行いました。実際に撮影状況を見せて頂きましたが、瞬時に解析され、計測結果がリアルタイムに表示されていました。

 

計測状況

計測状況

 

下図は、橋梁上を車両が通過した時における、桁の鉛直方向変位の計測結果です。比較のために計測したレーザー距離計の結果と波形がほぼ重なっており、確かに計測できていることがわかります。波形のノイズも少なく、500μm(=0.5mm)程度の変位であれば明確に捉えることができると思われます。

 

技術実証における計測結果(鉛直方向)

技術実証における計測結果(鉛直方向)

 

下図は、桁の鉛直方向、橋軸方向、橋軸直角方向の3方向の変位計測結果です。今回は、車両が通過した際の桁の挙動を計測したので、変位は小さいですが、橋軸方向および橋軸直角方向の計測値も鉛直方向の変位とともに反応していることが確認できました。

 

技術実証による計測結果(3方向)

技術実証による計測結果(3方向)

 

 

橋梁の伸縮量の把握に適合

これらの計測は橋梁の支承のスライド量に適合しているのか、簡単に試算してみました。橋梁の主な構成材料である鋼やコンクリートは、温度差1℃あたり概ね10μひずみます。1日の気温差を10℃、橋長を30mと仮定すると、橋梁が1日の気温差で伸縮する量は3.0mm程度となります。

技術実証した計測では、0.5mm程度の変位を明確に捉えられていたため、橋梁の伸縮が本技術の計測対象として成り立つ可能性は高いと考えられます。

 

今後の展望

今回は、車両通過に伴う桁の挙動で実証を行いましたが、今後は1日の気温差に伴う桁の伸縮を計測する実証を積み重ねることにより、実務に導入・活用できる技術になると期待されます。